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服薬ケア倫理


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◎服薬ケア倫理

《前文》

服薬ケアとは、QOLの向上を目的とした患者さん主体の医療が実現されるために、薬剤師が担うべき医療のあるべき姿を概念化し、理論体系として再構築したものである。 服薬ケアを実践するにあたっては、その理論と方法論を学ぶだけでなく、ここに掲げる心構えや行動規範を旨とすべきであり、そのような姿勢こそが服薬ケアの成功をもたらすであろう。

  1. 服薬ケアを実践するためには、これまでの固定観念からの発想の転換が必要である。薬というモノや事柄にとらわれた発想から離れ、患者さんの人生の価値をいかに高めるかという発想ができなければならない。この発想の転換ができたものには、服薬ケアはあたりまえのことばかりのはずである。

  2. 服薬ケアは医薬分業を前提とする。日本の文化の中に本当の意味での医薬分業がしっかりと根付いていない現状では、文化としての医薬分業を定着させることも服薬ケアの目的の一つであり、そのための行動も服薬ケア実践論の中に含まれている。

  3. 服薬ケアを実践するものは、自らの基(もとい)となる知識の学習や技術習得のための訓練を怠ってはならない。服薬ケアは現実的に役に立つ知識や技術が優れていてこそ、その力を発揮するのである。

  4. 服薬ケアを実践するものは、自らが身に着けた知識や技術を自らのみのものとしてはならない。共に努力する仲間と共有し、後に続く者たちに伝授していくことも、担うべき役割に含まれると考えるべきである。薬剤師の医療の発展のために自らを役立たせることを善しとせよ。

  5. 服薬ケアを実践するものは、あるべき姿を追い求め、理想像を常に持ち続けなければならない。なぜならば、患者さんにとっての理想の人生を追求するのがQOLの向上であり、理想にできる限り近づくことが、服薬ケアの最終的な目的だからである。

  6. 服薬ケアを実践するものは、現実を直視し、現実から逃げることなく、現実に対処するものである。現実の問題を一つ一つ着実に解決していくという結果を求められていると心得よ。理想のみを語り、現実を疎かにするのは服薬ケアではない。

  7. 服薬ケアを実践するものは、決してあきらめてはならない。たとえ現実が厳しくとも、理想が遠くとも、いつまでも、どこまでも、努力を続けることを旨とせよ。努力を惜しんではならない。

  8. 服薬ケアを実践するものは、愛情深き人間味豊かな心と、理性的で合理的な思考能力、判断力を、共に有するものでなければならない。そしてその両者がバランスよく保たれていなければならない。

  9. 服薬ケアを実践するものは、患者さんとそのご家族、また医師を初めとするすべての医療スタッフに対して、常に変わらぬ心構えと一貫した行動を貫かなければならない。これが服薬ケアの品位と信頼性を決定付ける。

  10. 服薬ケアを実践するものは、自分たちのどんな都合よりも、患者さんの利益を最優先しなければならない。そしてそれが本当に、真の意味で患者さんのためになっているかということを、常に点検しなければならない。

  11. 服薬ケアを実践するものは、医療者としての念いと個人の良心とが同一であるような人格を求められていると心得るべきである。

  12. 服薬ケア実践の源(みなもと)を一言で言い表すならば、それは「与える愛の念い」である。見返りを求めない与えきりの愛の念いが、ケアを提供しようとする人の心に満ち満ちている事である。

  13. 与える愛の実践とは、相手をとことん理解することである。とことん理解するとは相手の話をとことん聴くことである。とことん相手の話を聴き、とことん相手を理解せよ。相手がとことん理解できれば、自分が何をすれば良いかわかるはずである。

  14. 与える愛の念いが見返りを求めないものであるか、そうでないかは、私たちが提供したケアを受け取っていただけたことに感謝できるかどうかということでもある。自分たちの関与によって患者さんから感謝されることを当然と思ってはならない。もし感謝していただけたのなら、さらに深い感謝の心をお返しすることである。

  15. 服薬ケアを実践しようとするものは常に自らの心の在り方を振り返る習慣を持つべきである。今の自分の言葉は本当に与える愛に満ちたものであったか、今の自分の行為は本当に患者さんのためのものであったか、どんなささいなことでも常に我が心を振り返り、患者さんに向かって常に最高の自分を提供できるように心がけるべきである。

    (2004.11 Ver4.0)

◎服薬ケア倫理とは何か?

  「服薬ケア倫理」とは、服薬ケアを実践していく上での行動のもとになる考え方の規範であり、道徳原理です。つまり、このような考え方に基づいて行動することにより、服薬ケアが成功するという事を意味します。逆に言えば、外見的には服薬ケアに沿った行動のように見えても、その心の中がこの倫理規範に則ったものでなければ、本当の意味で正しい服薬ケアが行われたとは言えない事を意味します。

一見簡単なことのようで、それでいて実際には難しいことが書かれているかもしれません。場合によってはあなたにとっては当たり前の簡単なことかもしれません。いずれにしろ良く読み込んで、しっかりと自分のものとして咀嚼してください。そして何より実践する上での自らの拠り所としていただきたいと思います。

服薬ケアを実践するにあたっては、その実践者は自らの人間性を限りなく高めることを要請されます。しかし人間性はそう簡単に高まるものではありません。人間性を高める努力は続けていくにせよ、まずは行動規範をこの服薬ケア倫理に求め、自らの行動と心の在り方を律することから始めるべきでしょう。


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